心に鬼を 魂に炎を キレイごとだけでは語れない親子の人生。人は闇に落ちてしまうのか?(その3)

心に鬼を 魂に炎を(その3)

キレイごとだけでは語れない親子の人生。人は闇に落ちてしまうのか?

鬼岩 正和(おにいわ まさかず)

「いや、そちらが最終の受け入れ病院に指定されていますから。」

「そうです。心肺停止です。はい」

「では、これから向かいますので、よろしくお願いします。」

 

ようやく受け入れ病院が決まったようだ。

すでに死んでいると思える時は、病院だって受け入れるのは嫌だろうな。

救急車には、死んだ人は載せないとどこかで聞いたような気がするが大丈夫なのだろうか?

 

「では、中央病院に搬送します。どなたか一緒に乗っていきますか?」

「それじゃ、母を乗せていってください。私たちは自分の車で向かいますから。」

「外は寒いですから支度してください。待っていますから。」

と言われて、母を着替えさせ救急車に乗せた。

 

少しばかり気が抜けたような気がするが、とにかく着替えて女房と一緒に病院に向かうことにする。

 

それにしても、こんな時間にいったい何があったのだろう?

夕方、仕事から帰ってきたときには何も言っていなかったよな。

「こんな時間にいったい何があったんだ?」

「知らないけど、おじいさんが夕飯も食べていないからって見に行ったあと、突然叫んでいたんだよ。」

「まさかとは思うけど、ばあさんが殺したとかじゃないよな。さすがにじいさんの方が力があるか。」

「何をバカなことを言っているの。部屋に行ってからすぐだったよ、叫んだのが。」

「そうか、そうだよな。でも、夕飯の時には生きていたんだろう?」

「それは・・・ わからない。夕飯の時に食べなかったでしょう。」

「そういえば静かだったな。 じゃぁいったいいつまで生きていたんだ?」

「そうね。朝ごはんはちょっと遅めに食べたみたい。10時ころ?」

「それじゃ、そのあとは誰も見ていないのか?」