心に鬼を 魂に炎を Kindle版 「鬼岩 正和」初の私小説。何気ない日常に起こる父親の突然の死。果たして何を感じるのだろう?

2023年10月5日

ボケた父親の突然の死
親の死に対して悲しみの感情がわいてこない。
父親の死を、ボケ老人からの解放と考えるとは

実体験による心の葛藤
やはり、このような感情を抱くのは「鬼」なのだろうか?

病院につくと、待合室におばあさんが待っていた。
もっとしっかりしているように思っていたが、その後ろ姿は妙に頼りなく感じた。九十歳近いのだから当然なのだろうが、おじいさんの世話をしながら家事などもやっていたから元気そうに感じていただけなのだろうか。

「そこの受付にお願い。私には何だかわからないから」

受付に行き「少し前に運ばれてきた田中ですが」というと
「田中さん、そちらで少しお待ちください。」と言われたので、一緒に待合室で待っていると、事務員らしきおじさんがやってきた。

「田中さんですね。事務の富永です。もう少しで警察の方が来ますので、それまでもうしばらくお待ちください。」と言って、また奥に行ってしまった。

まるで事務の人がいなくなるのを待っていたかのように
「なんで警察が来るの? 何か悪いことをした? 疑われてるの?」
と、母と女房からチンプンカンプンな質問攻めにされて面倒になるのだが、やはり、ちゃんと教えておくべきなのだろうと思いながらも
「ちょっと飲み物を買ってくる。何か飲む?」

「田中さん、まず、おじいさんが死んでいるのを見つけたのはどなたですか?」
「母ですが」
「それじゃ、お母さん。死んでいるのを見つけたときどうされましたか?」
「すぐに息子を呼びました。なにがなんだかわからないので」
「そうですよね。そのあとは息子さんが対応したのかな?」
「はい、そうです」
「それではご主人。お母さんに呼ばれてから何をしましたか?」
「そうですね。息をしていなかったのですぐに救急車を呼びました。」
「えぇと、時間はわかりますか?」
「ハッキリとはわかりませんが、母に呼ばれたのが23時32分でした。」
「ずいぶん正確に覚えていますね。」
「ちょうどパソコンに向かって仕事をしていたのですが、すぐ横に時計が置いてあるんですよ。それがデジタルなので。」
「そうですか、あまりに細かく覚えているので少し驚きました。それで、呼ばれてから間もなく119番通報をされたのですね。」
「そうです。一応警察とどっちかな?とは考えましたが。」
「そうですか。かなり冷静に対応されていますね。ご職業は?」