心に鬼を 魂に炎を キレイごとだけでは語れない親子の人生。人は闇に落ちてしまうのか?(その一)

心に鬼を 魂に炎を
キレイごとだけでは語れない親子の人生。人は闇に落ちてしまうのか?

まだ十月だというのに、夜になるとさすがに肌寒い。

締め切りに追われ、二階の部屋で仕事をしていたがストーブをつけようか迷っていた。それとも夜食でも食べようか・・・

 

「ちょっと来て!急いで!大変なの!」突然、母が叫びだした。

23時32分、母の叫び声で時間を見た。

普段ならとっくに寝ている時間だ。

 

ガウンを羽織り、階段を下りていくと「おじいさんが、息をしていない」と言いながら私の袖口をつかむ母。

 

「息をしていないって、何かしたのか?」

「そんなわけないでしょう。夕飯も食べなかったから様子を見に来たの」

 

ともかく、救急車だな。死んでいるようだから乗せてくれるかどうかわからないけど・・・

 

「はい、119番です。消防ですか?救急ですか?」

「おじいさんが、息をしていないのですが」

「心臓は動いていますか?」

「え?心臓?・・・ 動いていないようです」

「わかりました。救急車を行かせます。それで、心臓マッサージはできますか?」

「大体はわかりますが・・・ ここでやるのですか?」

「そうです。ほかにできそうな人はいますか?」

「いや、年寄りだけですので無理です。」