心に鬼を 魂に炎を キレイごとだけでは語れない親子の人生。人は闇に落ちてしまうのか?(その2)
心に鬼を 魂に炎を
キレイごとだけでは語れない親子の人生。人は闇に落ちてしまうのか?
鬼岩 正和(おにいわ まさかず)
「それでは、やり方を説明するので救急隊員が到着するまで頑張ってください。上から3つ目の肋骨が真ん中で繋がったあたりに掌を置いて、5cmくらい沈むように力を入れてください。場所はわかりますか?」
「以前に訓練でやっているので、大体わかります・
「それでは、1分間に100回くらいを目安に心臓マッサージをしてください。電話は切らないでくださいね。」
「わかりました。スピーカーにして置きますね。」
「数分で救急隊が到着しますので、それまで頑張ってください。」
力を入れるたびに、開きっぱなしの口から空気が漏れる。
ハッ ハッ ハッ ハッ ハッ ハッ かなりの重労働だ。息が切れる。
心臓マッサージをされているおじいさんはというと、もちろんピクリとも動かない。
何だか、スカスカのふいごを思いきり押し続けているような。
それにしても、結構な反動があるものだ。
女房がようやくタオルを持ってきてくれたが、汗を拭いている時間などない。
少しすると「どうですか?心臓は動き出しましたか?」という声。
フッと我に戻り「あ!いえ、まったく反応はありません。」
「それでは、そのまま続けてください。もう少しで隊員が到着しますから」
「は、はい。わかりました」
まもなく、救急隊員が到着した。
テキパキとした動作で、「変わります。どうですか?」
「変わりません。心臓も動いていません」
心臓マッサージを私と交代した隊員が、まもなく「ダメですね。病院を探します。」と言いながらどこかに電話をしている。
「そうですか。わかりました」そう言って電話を切ると、またどこかに電話をしている。