もう一人の警察官が何か耳打ちをしている。まだ何かあるのだろうか。心に鬼を 魂に炎を キレイごとだけでは語れない親子の人生。人は闇に落ちてしまうのか?(その7)
心に鬼を 魂に炎を (その7)
キレイごとだけでは語れない親子の人生。人は闇に落ちてしまうのか?
鬼岩 正和(おにいわ まさかず)
「田中さん、まず、おじいさんが死んでいるのを見つけたのはどなたですか?」
「母ですが」
「それじゃ、お母さん。死んでいるのを見つけたときどうされましたか?」
「すぐに息子を呼びました。なにがなんだかわからないので」
「そうですよね。そのあとは息子さんが対応したのかな?」
「はい、そうです」
「それではご主人。お母さんに呼ばれてから何をしましたか?」
「そうですね。息をしていなかったのですぐに救急車を呼びました。」
「えぇと、時間はわかりますか?」
「ハッキリとはわかりませんが、母に呼ばれたのが23時32分でした。」
「ずいぶん正確に覚えていますね。」
「ちょうどパソコンに向かって仕事をしていたのですが、すぐ横に時計が置いてあるんですよ。それがデジタルなので。」
「そうですか、あまりに細かく覚えているので少し驚きました。それで、呼ばれてから間もなく119番通報をされたのですね。」
「そうです。一応警察とどっちかな?とは考えましたが。」
「そうですか。かなり冷静に対応されていますね。ご職業は?」
「会社員ですが。」
「パソコンを使うお仕事ですか?こういうことに慣れているのですか?」
「あぁそういうことですね。今はインターネット関係の仕事ですが、以前は警備会社にいて事件などの対応などの講習も受けていますから。もしかして、じいさんが死ぬことをわかっていたんじゃないかと疑ってます?」
「いや~失礼しました。あまりに冷静に対応しているようなので。ハハハ
それでは、通報後にされたことを教えていただけますか?」
「先ほどもお医者さんに聞かれましたが、その件ですね。119番通報をして息をしていないことを伝えたら、心臓が動いているか確認して、心臓マッサージをするように言われたので指示どおりにしました。」
「ありがとうございます。ちょっと待ってください。」
もう一人の警察官が何か耳打ちをしている。まだ何かあるのだろうか。