「まるで殺人犯扱いされたと言っている人もいるほど」心に鬼を 魂に炎を キレイごとだけでは語れない親子の人生。人は闇に落ちてしまうのか?(その6)
心に鬼を 魂に炎を (その6)
キレイごとだけでは語れない親子の人生。人は闇に落ちてしまうのか?
「ハッキリとした死因を特定するには解剖しなければなりません。ご主人としては解剖して死因を知りたいとお考えですか?もちろん、警察の方で解剖が必要だと考えれば別ですが。」
鬼岩 正和(おにいわ まさかず)
着いていくと奥の部屋にはおじいさんの遺体が横たわり、そのそばに医者が立っていた。
「ご主人、救急車に乗せるまでに何かされましたか?」
「え?救急車を呼んだら、電話で指示されたとおり心臓マッサージをしていて、救急車が来たから引き継ぎましたけど。何かありましたか?」
「あぁそういうことですね。ちょっと胸のところに圧迫痕があったので。」
「そうでしたか。ビックリしました。」
「ところで、警察の判断もありますが、このままではハッキリとした死因までは特定できないのですがどうします?」
「どうします?と言われてもよくわからないのですが・・・」
「ハッキリとした死因を特定するには解剖しなければなりません。ご主人としては解剖して死因を知りたいとお考えですか?もちろん、警察の方で解剖が必要だと考えれば別ですが。」
「そういうことですか。すでに死んでしまっているので死因がわかるよりも遺体を傷つけるほうが嫌なので解剖はしない方がいいのですが。」
「わかりました。それでは司法解剖、ということはないと思うのですが、警察の方で行政解剖が必要だと言われない限りはそのままお引き渡しができると思います。」
「わかりました。よろしくお願いします。」
それからしばらく待合室で待っていると、私服の警察官が3人、こちらに向かってくる。
「田中さんですね。もう少し待っていてください。ドクターに状況を聞いてきますので。」
と言って、医務室に入って行き、中で話しをしているようだ。
いよいよ、事情聴取なのかな?ばあさんや女房は大丈夫なのだろうか?
中には、まるで殺人犯扱いされたと言っている人もいるほどだから、簡単には終わらないのだろう。朝までかかるのは覚悟しておいた方がいいのかな。
などと考えているところに警察官が戻ってきた。